【福井新聞20130813】 http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/economics/44753.html
福井県食品加工研究所は、乳酸菌を添加した梅酒の製造技術を開発した。乳酸発酵により、味がまろやかさを帯びるほか、生菌が入った状態での流通も可能。同研究所によると、乳酸発酵させた梅酒の製品化は全国でも例がないという。数多くの種類が出回る梅酒業界に、ひと味違った商品を提案することで本県特産の梅の付加価値を高める狙いだ。
アルコール飲料に乳酸菌を使うのは、ヨーロッパの赤ワイン造りでは一般的な方法。「マロラクティック発酵」と呼ばれ、味をなめらかにし、香味を増す作用があるという。酸度が強い梅酒でも使える乳酸菌を同研究所が発見したことから、この菌を用いた研究を昨年度まで重ねてきた。年度末に特許が成立し、県内の酒造会社に情報を提供した。
アルコール濃度が5%以下で、酸性度は水素イオン指数(pH)3・5よりも強くないことを目安とした梅酒に、乳酸菌を添加。気温20~25度の環境で約1カ月発酵させる。乳酸菌は梅酒中のリンゴ酸や糖を原料に乳酸を生成し、味に変化をもたらす。同研究所の久保義人主任研究員によると「味がまろやかになるので、梅酒の中でも糖分が少なめのものだと、より変化が際立つ」という。
また、pH調整を行わずに菌を添加すれば、乳酸発酵が進まない代わりに菌が生きたまま出荷が可能となる。気温20度で2カ月程度は1ミリリットル当たり100万個の菌数を確保でき、健康飲料としての販売も期待できる。
情報提供後、福井市の西岡河村酒造など数社が興味を示し、今後どのような商品展開をするか打ち合わせしている。久保さんは「来春の梅の収穫シーズンには間に合うよう、最終的な商品開発を進めていきたい」と話している。